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コラム:氷水チャリティとチェーンメール

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 難病のひとつであるALS(筋萎縮性側索硬化症)への支援を呼びかけるチャリティ企画として、氷水をかぶって次の人を指名する「The Ice Bucket Challenge」が大きな話題を呼びました。世界的に知られる著名人やスポーツ選手が、バケツいっぱいに入った氷水を頭からかぶり、次の人を指名してはリレー競技のように続いていきました。

 しかし日が経つに連れ、指名されることがまるで名誉のような雰囲気が強まり、人ではなくスマートフォンに水をかけるなど、本来の活動とは内容がかけ離れていきました。それに加え、活動そのものに歯止めがかからなくなる兆しも見えてきました。このような状況にふと思い浮かぶのが、しばしばインターネットで広まるチェーンメールです。

 今回のコラムは、氷水をかぶるイベントとチェーンメール共通の問題点について取りあげます。

● 氷水イベントのルール

 ルールはいたって簡単です。指名を受けた人は24時間以内に寄付金として100ドルをALS協会へ寄付するか、寄付をしない代わりに氷水をかぶるかのいずれかを選ばなければなりません。氷水をかぶったときは、次の人を3人まで指名できます。寄付をして、かつ氷水をかぶってもよく、そのときも次の人を指名することができます。

 イベント性が強い企画で、サッカーブラジル代表のネイマールやFacebook CEOのザッカーバーグなど著名人が多数参加したこともあり、世界中に活動が広まっていきました。寄付金は2週間で1330万ドル以上も集まったそうです。

● チェーンメール化する危険

 今回の氷水イベントのルールは、インターネットで突然広まるチェーンメールと酷似しています。

 チェーンメールは、インターネット中の人に転送してほしいと呼びかけて大勢の人に同じメールを送りつける行為です。転送行為を自発的に行わない限り、くさりのようにメールの転送が続きます。収束するまでインターネット中に同じメールが氾濫するはた迷惑な事態を引き起こします。

 氷水イベントもこのチェーンメールと似ています。指名された人は氷水をかぶった後、別の人を指名していきます。複数の人を指名すれば、その後に指名された人の数はうなぎ登りに増えていきます。指名された人が次の人を指名しない限り、この繰り返しは永久に続いてしまうのです。

 善意のつもりで呼びかけたものの、チェーンメール化して歯止めがかからなくなる出来事はインターネットでたびたび起こります。よくあるのは、輸血用の献血を呼びかけるメールです。これとまったく同じ状況を作り出してしまっているのが今回の氷水イベントなのです。

● 慈善目的の企画は歯止めをかける配慮を

 どんな企画であれ、インターネット上で活動していくときは、歯止めのかかるしくみを盛り込んでおくのが必要です。終了のための段取りを立てなかったり、自然収束で終わらせるような成り行き任せの運営は批判を浴びます。

 インターネット上で呼びかけを行いながらの活動は、あらかじめ期間を決めてから実施しなければなりません。そうしなければ永久にインターネット中に氾濫し、強制的に終わらせることができません。自発的に誰かが自浄しない限り収束できないような事態は起こさないようにするのが大切です。

 さらに、活動期間中でも中断や終了をするための体制を整えておくことも必要です。公式サイトで状況を随時知らせるとともに、目的が達成できたり不測の事態が生じたりしたときは途中で終了する旨を告知して収束できるようにしておかなければなりません。

 慈善活動の場合に特に重要なのは、本来の活動趣旨から逸脱した行動にエスカレートし始めたときへの対応です。寄付行為がすり替わり、売名やパフォーマンス目的が強くなってきたときには、早々に終了を呼びかけなければなりません。度が過ぎれば善意の活動が予想もしない悪い結末を迎える恐れがあります。潮時を見定めた判断をしていくことも主題者は忘れてはなりません。

 氷水イベントはチェーンメールのような事態にはならず、一過性の話題で終わりそうな状況です。とはいえ、長期化すればせっかくの慈善事業も台無しです。今後同様のイベントがインターネット上で繰り広げられるときは、収束のできる体制作りと運営が求められます。


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2014年9月11日発行 第362号

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